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桐野有美のコラム
お産の話−7 「後産期」

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2007年11月14日

 出てきた仔牛がちゃんと自力で呼吸をしたら、まずはひと安心ですね。しかしここで、母牛にはもうひとつ仕事が残っています。それは、「後産」の排出です。これを出すまでは、母牛はどこか不快そうなしぐさをします。
 後産とは胎盤のことです(細かく言うと、胎盤というのは、胎仔を包む膜と、それに接する子宮内膜とをまとめて呼ぶのですが、後産として排出されるのは、前者のほうです)。仔牛が外界に出てしまえば、母牛の腹壁の収縮は止まりますが、後産期陣痛というのが続いており、そのせいで子宮の筋肉は収縮し続けます。この収縮のおかげで、もはや不要となった胎盤が子宮の内壁から剥がれて、後産として産道から排出されるのです。だいたい分娩後3〜6時間くらいで出てきます。
 子宮はここからものすごい速さでもとの大きさに戻っていき、胎盤が剥がれてガタボコだった内壁はきれいに修復されていきます。分娩直後は10kg近くあった子宮が、一ヶ月で1kgほどに縮むのです。このとき、子宮内に残っていた胎盤や胎水などが排出されますが、これが汚露と呼ばれるものです。こちらは分娩後2、3日あたりで最もたくさん排出され、最終的に半月ほどでおさまります。

kirino_20071114

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