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桐野有美のコラム
お産の話−3 「きっかけは胎仔」

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2007年10月17日

 一般的に「お産だ!」と気づくのは、いよいよ陣痛の間隔が短くなり、怒責(いきむこと)が強くなってくるあたりではないでしょうか。しかし、実際の分娩はそれより5時間くらい前(初産だと10時間くらい前!)から始まっています。これは「開口期」と呼ばれるもので、ジワリジワリと陣痛が起こりはじめ、産道(胎仔が通過するところ)が少しずつ拡がっていくステージです。もっと言うと、実はその前日あたりから母牛と胎仔は協同作業で分娩の準備を始めているのです。
 「そろそろ生まれたい!」という意思表示を先にするのは、胎仔のほうです。副腎皮質ホルモンというのを分泌してその意思を母牛に伝えます。すると、その声を受け取った母牛の胎盤は「わかったわ!」と、それまで出していた“妊娠を維持するためのホルモン(プロジェステロン)”を止めて、“分娩準備のためのホルモン(エストロジェン)”に切り替えます。このホルモンは、子宮の入り口(子宮頚管)を柔らかくして拡げると同時に、“陣痛を起こすホルモン(プロスタグランジンF2α)”を作らせます。さあ、陣痛の始まりです。

kirino_20071017

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