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蓮沼浩のコラム
第423話:やっぱり、肺炎にしてはいけない その2

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2015年10月15日

 明日は熊本で学会があるので今日の夜から熊本入りです。久しぶりにシェパード卒業生の佐々先生と飲み会です。今から楽しみですが、調子に乗りすぎて泥酔しないように気をつけます。ワクワク。

 「バイオフィルム」
 これを気管支の中に作られてしまうと、残念ながら抗生物質を投与しても届きません。非常に戦いが厳しくなります。小生はよく比喩として肺の中に細菌軍団が「要塞を作った」と表現します。抗生物質の弾を撃ってもびくともしません。塹壕程度なら何とかなるのですが、要塞となると中に細菌の兵隊が沢山隠れていて、隙を見ては中から出てきて陣地を広げていきます。ひどいものになるともう小田原城レベルです。肝変化して中に膿瘍なんか作っています。牛さんも、農家さんも、獣医さんも激しい消耗戦をしいられます。

 「いや~~、肺の中に小田原城ができているよ。ど、どうする・・・・」

 この小田原城を攻略するために、小生は普通の抗生物質だけではなく、バイオフィルムに効くといわれているホスホマイシンやマクロライド系の抗生物質を使って戦ったりもするのですが、戦績はやはり厳しいものがあります。もう、ありとあらゆる手段を使って戦うのですが、簡単ではありません。
 しかし鹿児島大学の最近の研究で面白いことがわかってきました。慢性化した肺炎の場合、気管支肺胞洗浄をすると肺の洗浄液の中から必ずマイコプラズマ・ボビスが検出されるのです。細菌軍団が肺の中に塹壕や要塞をつくるときに大きな手助けをしているのがこのマイコプラズマ・ボビスであることがわかってきています。極端な話、このマイコがいなければ、パスツレラやマンヘミアもそこまで怖くないという意見もあります。
 マイコといえば中耳炎ですがもちろん肺炎でも重要な役割をはたしています。さらに酪農の世界ではマイコプラズマ性乳房炎は超重要疾病として皆さん神経を尖らせています。このマイコをいかにして抑えるかが牧場の疾病対策で重要になります。

閲覧注意!
下に写真を貼り付けますが、臓器の写真なので苦手な方はスクロールしないでくださいね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


とてつもない要塞ができています。抗生剤の弾もまったく役に立ちません。


気管支の中もひどい状態。バイオフィルムどころの騒ぎではないっす。

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