(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
桐野有美のコラム
寄生虫の話−10 「こんなメリットも」

コラム一覧に戻る

2007年4月18日

 というわけで、消化管内線虫を駆除しておくメリットを整理すると・・・①牛の免疫システムは、もともと消化管内線虫への攻撃が得意じゃない。駆虫薬の投与はそれらの寄生虫を簡単かつ確実に死滅させることができる唯一の手段。②免疫システムが消化管内線虫の相手をしなくていいので、ウィルスや細菌などの侵入防御に専念できる③農家さんが一生懸命食べさせている高価な飼料を、横取りされないで済む。食べさせたエサはすべて牛の成長のために!④消化管内線虫そのものが胃や腸に与えるダメージを受けずに済む。ということは、消化・吸収の邪魔をされずにすみ、消化不良による下痢も起こりにくくなる。
 さらに、獣医の立場からもうひとつ。現場で、「下痢がなかなか治らない!」「仔牛の発育が遅れてる!」という依頼で牛を診て、“この牛、なんでこんなふうになっちゃったかな?”と考えをめぐらすわけですが、そこの農家さんがすでに駆虫を済ませてくださっている場合は、「疑わしい原因リスト」の中から、消化管内線虫の可能性を除外できるのです。確実かつ安価な治療法を組み立てるために頭をフル回転させている立場として、これはかなり助かります。

|