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桐野有美のコラム
寄生虫の話−7 「作戦成功?」

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2007年3月28日

 指揮官が「細胞性免疫」作戦を指示すると、兵士たちはその作戦のシナリオに沿って、連携プレーでコクシジウムの邪魔をします。同様に、指揮官が「液性免疫」作戦指示すると、兵士たちはそのシナリオに沿って、乳頭糞線虫などの線虫を攻撃します。
 しかし厄介なことに、この「細胞性免疫」作戦と「液性免疫」作戦はふたつ同時に実行することができません。つまり指揮官はどちらかひとつを選ばなくてはならないのです。しかも、いったん動き出した作戦は簡単には止まりません。作戦が終了するのは、敵である寄生虫が排除されたときです。
 では、仮に牛の体の中ですでに「液性免疫」作戦が実行中だとします。ここで消化管内線虫をターゲットにした駆虫薬(イベルメクチン製剤やモキシデクチン製剤など)を投与すると、敵である消化管内線虫がこてんぱんにく駆除されて、「液性免疫」作戦は必要なくなり、終了します。しかしコクシジウムは殺されずに残っていますから、指揮官はスパイから「コクシジウムのやつらが生き残ってますぜ」という報告を受けて、今度は「細胞性免疫」作戦を発令し、コクシジウムの邪魔をすることに全力をあげます。
 しばしば現場で聞かれる「消化管内線虫を駆除したら、コクシジウムによる下痢まで減った!」という思わぬ効果(?)は、このようなストーリーによるものではないかと言われています(まだ科学的には証明されていないですが)。
ただし、そんなにうまくいかないことも多々あるようなのです。それについては次回!

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