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桐野有美のコラム
「第13話 「エンドトキシンの怪!」」

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2006年12月9日

 ルーメン内のpHが下がっていくにつれ、ルーメンのを中和してくれるはずの唾液の分泌もルーメンの運動も低下していきます。ついにpHが4.5を下回ると、繊維を分解する微生物は死滅、消失します。かわりにグラム陰性菌というに強い微生物が増えますが、さらにpHが下がっていくとさすがのグラム陰性菌もダウンし始めます。ただダウンするならまだいいのですが、彼らは死ぬときに苦しまぎれにエンドトキシンというものすごい毒を放出するからやっかいです。
 グラム陰性菌が放出するエンドトキシンは、非常に強い毒性をもちます。発生してしまったエンドトキシンは、血流にのって肝臓に運ばれ、ここで解毒処理されます。しかし、その量とスピードが肝臓の処理能力を超えたとき、全身に大量のエンドトキシンがまわります。
 こうなると大変です。肝機能、心機能、消化管機能に障害が起こります。ひどい場合は突然死を招くこともあります。肝炎筋肉水腫(ズル)も、このエンドトキシンが原因のひとつであると言われています。
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