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桐野有美のコラム
「第12話 「玉突き事故の始まりです」」

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2006年12月2日

 乳酸は非常に強いで、腐食性があります。酸性になったルーメン内のpHをさらに下げるだけでなく、ルーメン内壁に炎症を引き起こします。
 この炎症が持続すると、ルーメンの内側を覆っている粘膜細胞たちは、の攻撃に対して抵抗するために分厚く増殖しようとします。(お肌のターンオーバーと言えば女性の方はピンとくるかもしれませんが)古くなったり傷害を受けたりした細胞は、剥がれ落ちて、その下には新しい細胞が用意されています。しかし粘膜細胞の増殖が加速しすぎると、勢い余って未熟な細胞までもがフケのように剥がれていき(ルーメンパラケラトーシスといいます)、ついにルーメンの内壁はボロボロになります。傷だらけになったルーメンは、いろんな病原菌にとって、かっこうの侵入口になります。
 例えば、壊死桿菌(フソバクテリウムFusobacterium necrophorum)などはたちの悪い病原菌のひとつです。ルーメン内壁の傷口からまんまと侵入した壊死桿菌は、血流にのって肝臓へ達し、そこで膿瘍(膿のかたまり)を作ります。これが肝膿瘍です。屠場では肝臓廃棄の対象となります。
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