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桐野有美のコラム
「第11話 「ルーメンアシドーシスの現場では・・・」」

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2006年11月25日

 ルーメンアシドーシスの背景についてわかったところで、今度は実際にルーメンアシドーシスになった牛の体内ではどんなことが起こっているのかを書いてみようと思います。
 まず先週の記事で書いた背景を前提に、ルーメン内のpHが下がった(=酸性になった)とします。すると、そういう酸性の環境を好む微生物(ストレプトコッカスStreptococcus bovisがその代表)が喜んで増殖し始めます。彼らは乳酸産生菌ですので、デンプンを分解して乳酸をどんどん作りだします。
 健康なルーメンだったら、そうやって発生した乳酸をありがたいVFAに変えてくれる別の種類の微生物たち(乳酸産生菌が作った乳酸をエネルギー源としている)がいます。ルーメン内は分業制で成り立っているのです。
 しかし、もはやルーメン内は酸性環境を好む乳酸産生菌の天下!その他の微生物は酸性環境に耐えられず、影をひそめているのです。ということは、乳酸産生菌によって作られた乳酸VFAに変換されることなく、ルーメン内にどんどん蓄積していくことになります。困ったことに、この乳酸というのは、とても強い「」なのです。ルーメン内の環境がますます悪い方に転がっていくのが容易に想像できます・・・!
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