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桐野有美のコラム
「第10話 「ルーメンアシドーシスの背景」」

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2006年11月18日

 ルーメンアシドーシスになる背景には、大きくわけてふたつのパターンがある、というところまでが前回のお話でした。
 まずひとつめのパターン。発酵消化の速い餌を多く与えすぎた結果、大量の有機酸(特に乳酸)が急速に発生してしまうことになります。ルーメン内壁としては、じゃんじゃん発生する有機酸を必死で吸収したいところですが、その吸収できるスピードを超えて有機酸が発生し続け、瞬く間にルーメン内に酸が蓄積してしまうのです。
 ふたつめのパターンは、有機酸(VFAも含む)の発生のしかたはふつうなのに、そのふつうの量の有機酸さえルーメン内壁から吸収できないというものです。その原因として「育成期におけるルーメン内壁の発達が不完全であった」場合と、「せっかくよくできたルーメンだったのに、肥育が進むにつれて粘膜表面を健全に保てなくなって(ビタミンA、亜鉛欠乏など)吸収能力が低下してしまった」場合が考えられます。
 どちらのパターンでも(ふたつが重なった場合はなおさら)玉突き事故のように悪いことが次々と起こります。
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