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桐野有美のコラム
「第9話 「職業病 その1 ルーメンアシドーシス 」」

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2006年11月11日

 後半は、肥育牛の職業病ともいえるルーメン発酵異常を中心とした代謝病について書いていこうと思います。
 まずはルーメンアシドーシスです。
 その名のとおり、ルーメンがふつうより酸性になってしまった状態です。これは代謝病のなかで最もよく見かけるものであり、しかも他のいろんな病気の引き金となりうる病態です。
 「胃の中が酸性になる病気?だいたい胃の中はもともと酸性なんじゃないの?」と思われそうですが、人間の胃と違って、牛のルーメンからは胃酸なんて出ません(第四胃からは出ます)。時間帯によってちょっと変動はありますが、正常なルーメンはほとんど中性、つまりpH 6.5〜7.5です。
 胃酸が出ないのになぜ酸性になったりするのでしょうか?ここで登場するのが炭水化物が発酵してできる有機酸(揮発性脂肪酸やその作りかけ物質である乳酸)です。これは牛にとって大事な栄養ですが、少しまちがうとルーメン内をどんどん酸性に変えていく両刃の剣なのです。そんなことになってしまう背景には、次のようなふたつのパターンがあります…
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