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佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−69 「粗飼料の意味」」

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2010年1月8日

 元来、牛は草食動物です。その牛に穀類を多給してもルーメンが正常に働いているのは、粗飼料のおかげです。牛は粗飼料を摂取することによりルーメンマットを形成し、それによってルーメン内での穀類の急激な発酵を防ぎます。また粗飼料そのものの機械的刺激により反芻を呼び起こし、唾液の分泌を促進するという役割もあります。唾液はアルカリ性なので、これがルーメンに流入することにより、ルーメンアシドーシスが緩和されるのです。
 中期以降の粗飼料の考え方は農家さんによって様々ですが、後期に入って粗飼料を制限する農家さんも多くいます。
 では、なぜこんなに重要な粗飼料を肥育後期には、制限するのでしょうか?それは、牛を枯らすためです。牛を枯らすには肥育末期に濃厚飼料の摂取量を上げなければなりません。しかし、稲ワラなどの肥育中・後期に使用する粗飼料は、栄養分は低いですが、カサがあるので、あまりたくさん給与してしまうと、その分ルーメン内に入る濃厚飼料の量が減るので困る、という考え方です。
 もう一つは、稲ワラにも微量ながらβカロチンを含んでいるので、摂取するビタミンAの量を制限するという意味もあります。
 しかしこの肥育後期の粗飼料制限、注意をしないと牛にとって大変大きなストレスになるのです。
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