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佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−63 「肝炎かもしれない?」」

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2009年11月20日

 下痢のお話に戻りますが、個体によっては、下痢を何度も繰り返す牛がいます。下痢を発症すると、一過性に食欲は落ちますが、便性状が良い時は下痢をしながらも快調に食べます。診療でも、「またあの牛が下痢する」と言われ、顔なじみの牛を治療することがあります。こういう牛を血液検査してみると、必ずと言っていいほどGOT(AST)やγ-GTPなどの肝酵素が上昇しており、肝炎になっていることが多いです。もちろん、肝炎だからと言って肥育を止める訳にはいきませんので、治療しながら肥育することになります。治療法としては、下痢や発熱や食欲低下など症状を呈している個体に関しては、ステロイド剤などの消炎剤、ビタミンB群や強肝剤を与えたり、ブドウ糖を補給したりします。
 また、このような肝炎の症状を呈する個体には、月齢にこだわらずに十分にビタミンAを補給しましょう。「肥育」というのもの自体が肝臓に負荷をかけるものですから、ビタミンAまで制限して肝炎を悪化させるよりは、ビタミンAを補給してなるべく肝臓を保護してあげるのです。また、肝炎を持っている個体は、胆汁などの消化酵素が正常に分泌されていないことも多いですから、こういう個体がいる部屋は良質の粗飼料を飽食にしてあげましょう。なるべくルーメン内の正常化を保ち、下部消化管への負担を減らします。もし1頭部屋の仕上げ舎ならば、濃厚飼料の量を調節するのも良いです。食べるからといってあまりにも餌を追い過ぎないことです。少し制限気味の方が感触が良い気がします。
 肝炎という病態生理はとても難しく、生産性を追求する「肥育」というもののなかで、どのような治療、餌、管理が良いものか、私たちもまだまだ試行錯誤中です。
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