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佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−61 「必ず獣医を呼ぶ下痢」」

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2009年11月6日

 前回のコラムでお話したようなルーメン内の変化による一過性の下痢ならば、健胃剤やサルファ剤を飲ませることで下痢はすぐに止まります。しかし、そういった治療では反応しない下痢もあるのです。いわゆる、代謝性腸炎と呼ばれるもので、肥育中期以降において、時には41度以上発熱し、黄色(時には灰緑色)の水下痢(本当に中味のない水のような下痢)を排泄します。発生原因はエンドトキシンによる肝臓障害です。エンドトキシンについては他の先生のコラムでも何回か紹介されていますが、種々の原因によりルーメン内のpHが下がってアシドーシス状態になると、ルーメン内の大腸菌などのグラム陰性菌が死んでしまい、そこから放出されるのがエンドトキシンという内毒素です。このエンドトキシンは外因性発熱物質とも言われ、全身の様々な所を障害します。中でも肝臓が障害されてしまうと代謝性腸炎が発症するのです。エンドトキシンにより障害された肝臓をそのまま放置しておくと、単なる炎症から重度の肝炎へと移行してしまうので注意が必要です。治療方法としては、ステロイドという消炎剤が特効薬です。ステロイド剤は、炎症の初期であればあるほど効果が大きいですので、早めに投与したいものです。とにかく、代謝性腸炎だ!と思った場合は、すぐに獣医さんを呼んでください。普通の下痢と区別するためには、肥育中期以降の牛で、餌を食べずに下痢をしていたら、すぐに体温を計るように心掛ければ良いと思います。
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