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佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−59 「下痢をほっとかない」」

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2009年10月23日

 中期〜後期にかけて、一番多い病気といえば「下痢」ではないでしょうか?飽食の考え方でお話しした「本当の飽食」の方法で肥育している農家さんでは特に多い病気です。
 これまで一定の濃厚飼料を順調に食べて消化吸収してきた牛さんですが、肥育が進むにつれて、ビタミンAや亜鉛の欠乏によりルーメンの機能が弱くなってきます。そうすると、ルーメンでの酸の吸収能が落ち、ルーメン内のpHが下がるルーメンアシドーシスの状態になって、ルーメン内のミクロフローラに変化が生じてきます。ミクロフローラが変化すると第1胃における食べた飼料の発酵および分解が上手くいかなくなると共に、第2胃以降への酸の流入など、下部消化管への負担が増えて、未消化物を含む下痢となるのです。
 今まで順調に肥育してきた牛が、初めて下痢した場合、ほとんどの農家さんは獣医を呼ぶことはないと思います。しかし下痢をするということは、せっかく食べた飼料が上手く吸収されないということであり、とても飼料効率が悪いという点でもマイナスです。さらに、牛さんのルーメン内のミクロフローラが異常であるということは、様々な病気に罹りやすくなったり、突然死の原因にもなります。牛さんにとっては非常に重いストレスであり、危険なことなのです。牛はルーメンが一番重要です。下痢はほっとかずに神経質なくらい対応しましょう。
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