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松本大策のコラム
中国牧場奮闘記 その11

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2015年5月25日

 さて、肥育素牛は牧場長のジャンさんが農家の情報を集めて、個別に集めることになりました。口で言うのは簡単ですが、たいていの農家は使役牛として母牛を飼っていて、それに近所の雄牛を自然交配して、生まれた子牛を販売する、という飼育方法ですから、1件の農場で1から2頭しか飼っていません。しかも、いつ交配したか?なんて覚えてもいませんし、子牛の生まれた日付も覚えていません(というか、月齢の進んだ子牛の方が高く売れるのでたいていは、早く生まれたようにサバを読んでいます)。そういう、日齢も親も解らないような子牛を集めて肥育するのかと思うと、本当にめまいがしてきました。

 中国で大変なのは、子牛集めだけではありません。日本と違って「配合飼料」とか「単味飼料(大豆粕とかフスマとか)」が売ってあるわけではありません。こちらも、トウモロコシを作っている農場に交渉して分けていただくしかありません。しかも「欲しがるやつには高く売る!」というある意味正しい商売根性をもっていますから、飼料に関しては、日本国内とほぼ同じ価格になってしまいます。これは大きな誤算でした。
 それから、僕は大麦は皮付きの圧片を使いたかったのですが、そんなものはどこにもありません。苦肉の策で、現地のスタッフが魚の干物をペッタンコにするローラーの機械を見つけてきてくれました。蒸気加熱は難しいのでお湯を通して、この機械で圧片を作ることにしました。それから大豆粕ですが、日本のようなエタノールで大豆油を抽出したものではなく、大きな圧搾機で絞りきった残りを大豆粕(向こうの言葉で言う「大豆餅」)と呼んでいます。とにかく飼料に関しては、原料を入手するたびに牛さんの便の性状や反芻、被毛の状態、蹄の伸び方、などを見ながら配合割合などの調整をしていきました。
 何とも大変な仕事で、今の僕なら絶対手を出しません(笑)。

 敷料はどうしたと思いますか?中国の家は煉瓦造りですから、日本のように建築用の木材加工から出てくるノコクズはほとんどありません。ですから正直「どうしようか?」と考えていましたが、牧場長のジャンさんに相談すると、「先生、中国は家具をたくさん作るから、ノコクズはいくらでも入手できますよ。」という返事で、すぐにたっぷり用意してくれました。これにはとても安心しました。


ほとんどが数頭飼い

つづく

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