(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
割り込みコラム:ワクチンのちょっとした話

コラム一覧に戻る

2015年5月18日

 みなさん、いろいろなワクチンをお使いだと思います。ワクチンというのは、いろんな病原体に対する免疫を高めるために使うお薬で、特定の病原体を殺したり、弱めたりして注射すると、打たれた牛さんは、その病原体で病気になることなく、その病原体の免疫だけを高めることができるのです。
 ちなみに、病原体を殺してあるワクチンが「不活化ワクチン」、病原体を弱めてあるのが「弱毒生ワクチン」というものです。どちらにも一長一短がありますから、その使い分けは、いろいろと考えながらやるのですが(LK方式とかいろいろあるんです)複雑になるので、ここでは省略します。
 ただ、よく知られているのは、BVD-MDという病気に対するワクチンは、妊娠中のお母さん牛に「弱毒生」タイプのワクチンを打つと、生まれくる子牛が免疫不全牛になる(正確には妊娠時期によるのですが、間違えやすいので妊娠中は「不活化ワクチン」にしときましょうね。

 ところで、今日のお話の中心は、ワクチンは、含まれている病原体(ウイルスとかバイ菌ですね)以外に対する免疫向上は期待できないと言うことです。だからこそ、ヘモ(いまはヒストフィルスといいます)を防ぐためにはヘモのワクチン、肺炎を防ぐには肺炎ワクチン(通常は5~6種のウイルスが入っています)を使うわけです。

 さてここからが、今日のお話の新しいところで、「病原体(特に構造が簡単なウイルス)も進化してくる」ということです。つまり、「去年はこのワクチンで効果があったのに、今年は効かない。どうして?」ということが起こるのです。
 そこでワクチンのメーカーさんも、流行している病原体の遺伝子や抗原性(免疫を高めるための構造)を調べて、変化があればできるだけその新型に合わせてワクチンを変更していこうという努力をしているのです。例を挙げれば、ゼノアックからでているボビエヌテクト5は、京都微研の肺炎5種混とは違うRSウイルスの抗原を使っていますし、共立のボビバック5の中のBVD-MDウイルスは、最近増えている変化したウイルスの抗原を使っています。

 どちらが良いというのは、それぞれの農場で病原体を調査しないと言えないのですが、群れの半分ずつで抗原性の違うワクチンを使ってみると、差が出てくるかも知れません。

|