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戸田克樹のコラム
第32話「卒業論文⑰ストレスって見えないよね~行動編⑧~」

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2015年5月8日

さて!
ひたすらじっと行動を観察し続けて集めたデータたち。
(人生であんなに動かなかったことはなかったのではないでしょうか笑)

観察の結果、わかったことは
動物園のチンパンジーはほとんど「休息」している
ということでした。

動いているのはエサの時間や午後の数時間くらい。
あとはじっと座ったり寝転んだりしている。という結果でした。

やっぱりか。
という感じですね。

ただ、動物園間で差が見られた行動があったことは非常に興味深かったです。
ひとつはストレス行動のひとつである「セルフスクラッチ(体の一部を掻く行動)」の割合。
H動物園よりもK動物園の方がより頻繁にセルフスクラッチをしていたのです。
さらに、他個体に対して行う毛づくろい行動もやはりK動物園の方が頻繁に行われていました。
 
 
H動物園ではチンパンジーが2頭飼育され、一方、K動物園では4頭飼育、かつ雄雌混合飼育でした。

行動割合の違いは、「個体数が多くオスもメスもどちらもいる」というより複雑な社会構造が影響したのかもしれません。
差がみられた行動はどちらも社会的行動ですから。

また、K動物園では赤ちゃんが誕生したばかりということもあって、メスが頻繁にお母さんチンパンジーに抱かれた赤ちゃんの顔を覗き込む様子が確認されたことも非常によく記憶しています。
 
 
私たち人間だって、1人より2人、2人より3人と集まった方がいろいろと行動しますもんね。
1人じゃうろうろしたりぼーっとしたりするだけかもしれませんが、他に誰かいれば、しゃべったりどこかに出かけたりと、いろいろな活動が行われると思います。
彼らも私たちも、そうしたところはとてもよく似ています。

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