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松本大策のコラム
中国牧場奮闘記 その8

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2015年4月13日

 土地が決まったら、何度も設計会議を繰り返しました。なんと言っても日本式なんて、それまで見たこともない人たちです。写真や図を見せながら一生懸命話し合いを続けます。中国では大きな声で話すので、知らない人は「けんかしてるのか?」と思うでしょう。
 それから、中国で10年以上仕事をして気づいたことですが、些細な言葉でも、互いの理解の違いがまれに(頻繁に?)起こるということです。日本人は、「ここは察してくれるだろう。」とか、「まあ、大きな問題じゃないからここは様子を見て」なんて考え方をしますが、たとえけんか腰でも、しっかりこちらの意思を伝えること、相手の言葉の真意を確認すること、この2つを怠ると、後々大きな問題になることが多いのです。

 ともあれ、こちらも中国の状況を知りませんから、「牛舎の柱は亜鉛のどぶ漬けのものを使いたいのですが、値段は高いですか?」などの質問をしながら材料などを決めていきます。このときも「値段は高いですか?」という質問は良くなかった、と後で思い知ります。「値段はいくらですか?」と聞けば良かったのに、「値段が高い」は主観ですから、僕の頭にある値段と、先方の思い描く価格には大きな開きがありました。

 それから、中国では床のセメント塗りを、必死でツルツルにしてくれます。向こうの左官さんの意地でしょうが、これでは牛が滑ってまたざきをします。必死で説明して箒目を入れても、ちょっと目を離すとまたツルツルにしてあるのです(写真1)。
 さすがに最後は実力行使で、でっかい棒で床をガタガタにして、「これをツルツルにするヤツは追い出す!」と宣言しました。

 牛舎建設の苦労話はそれだけでも本がかけるくらいですが、建築技術のレベルの低さというか、いい加減さにはうんざりの連続でした。仕切り枠を取り付けたら、ロックするための栓まで届かない、なんてのはかわいい方で(写真2)、一番まいったのは、手抜きというか材料費の横流しというか、支柱の鉄管が床のコンクリートに5mmくらいしか埋まっていなくて、僕がもたれかかったら簡単に床が割れて柱が抜けてしまったり(写真3)、後は技術(っていうかやる気か?)の問題で、仕切り枠を日本の牛舎でよく見かける、ヒンジで開いて仕切りになるタイプにしたのですが。普段はきちんと締まっているのに、90度開くと真横ではなく、斜め上に開いてしまい、全然仕切りにならない、などの日本では考えられない状況が日常茶飯事で、それを一つ一つなだめたり怒ったりしながらなんとか作り上げていきました。
続く

中国牧場奮闘記 その8

中国牧場奮闘記 その8

中国牧場奮闘記 その8

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