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戸田克樹のコラム
第27話「卒業論文⑫ストレスって見えないよね~行動編③~」

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2015年4月6日

最近、とある農家さんからチンパンジーと呼ばれるようになりました。
コラムに目を通していただいているようで、非常にうれしく思います。
ありがとうございます。今年度もよろしくお願いします。春ですね。

 ストレスを感じると体をカキカキするチンパンジーさん。それは、僕らがイライラしたときに頭をかきむしってしまうのに似ています。当時の戸田は、ストレス指標となるその行動をどうやって記録していったのでしょうか。今回から、「行動観察」をテーマに書いていこうと思います。

どんな行動を記録すべきか
 実験を始める前に、何を目的としているかは明確にしておかなければいけません。当時の戸田が知りたかったのは、「どんなことがストレスになっているのか」「ストレスをどの程度感じているか」「チンパンジーはどんな行動をとっているのか」といったところでしょうか。
 ストレスの指標となるのは、先にも述べたセルフスクラッチという行動です。さらに、社会生活を営む彼らが群れの中で他の個体にどういった行動をとるかも気になるところ。そこで、「ソーシャルグルーミング(自分ではなく、相手へのグルーミング。いわゆる毛づくろいです)時間」、「他個体の追跡時間」「闘争時間」などに着目しました。

 もちろん、観察を始めていく中で予想もしなかった行動がみられることもありました。それについては随時記録することにしました。
 観察記録においては「すべてを記録しようとしないこと」が重要となります。
 相手は生き物です。見せてくる行動は多岐にわたりますし、記録をとっているとその間に新たな行動をとり始めたりすることも多々あります。そうすると記録が追い付かず、パニックになることもしばしば。事前にターゲットをしぼることで、より精度の高いデータをとることができるのです。
 すべてを手に入れようとすると失敗するのは、どの世界でも共通ですね。

次回は「どうやって記録したのか」についてお話ししますぅ。

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