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佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−27 「飼料給与マニュアル(2)」」

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2009年2月27日

 一番確実にマニュアル通りに餌を給与出来る方法としては、繋ぎなど1頭で肥育することです。しかし2頭以上になってくると決められた量をきちんと給与すること困難になります。2頭の力関係に優劣がある場合は尚更です。そしてこれは1部屋の肥育頭数が多いほど、難しくなります。
 例えば、1部屋5頭のパドックがあったとします。前回のマニュアル通りに増飼して行くと、2ヵ月目、1部屋全体で濃厚飼料が1日30kg、一日2回給餌で1回あたり15kgとなります。マニュアルでは1頭あたり3kgずつ給与している計算になるのですが、本当にちゃんと各個体に3kgずつ給与できているのでしょうか? よーく見てみると、強い牛ほどたくさん食べていて、弱い牛は少ししか食べていない事が多々あります。
 とても真面目な農家さんで特に多いのですが、マニュアル通り規定量給与しているのに上手く牛が出来て来ない、牛群全体が揃わない(発育不良の牛が多い)などというケースがあります。マニュアル通りに増飼はしているのですが、計画通りにそれぞれの牛に給与出来ていないのです。
 ここで重要なのが、本当に餌が足りているのかということです。マニュアルはあくまでマニュアルであり、目安でしかありません。足りないと判断したらマニュアルの量に関係なく給餌量を増やすさじ加減がまず必要です。よく農家さんとの会話の中で、この牛群で一番良い牛はどれですかという質問をすると、多くの農家さんは、その牛群の中で一番肥えた牛を選びます。その牛は間違いなく一番強く、たくさん餌を食べています。もちろん、その牛の能力が大きいのかもしれませんが、もしかして餌が足りず能力を発揮出来ていない牛がその陰に隠れてはいませんか? 頭の片隅にこの考え方を持っておくとよいと思います。
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