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佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−24 「ルーメンアシドーシスの治療(2)」」

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2009年2月6日

 急性のルーメンアシドーシスの原因療法はルーメン内を正常に戻すことであり、前回のコラムに書いたように補液だけ行っても、ルーメン内のコントロールを行わないと治癒の方向に向かいません。よって一番重要なのがルーメン内の正常化となります。
 本当に急性のアシドーシスの場合は、第一胃切開により内容物を取り出す方法がありますが、私はまだ肥育の増飼によるルーメンアシドーシスに第一胃切開を行ったことはありません。しかし胃洗浄は行います。重度のルーメンアシドーシスの時のみですが、胃洗浄とは、大量の水(お湯)を牛に飲ませ、サイホンの原理で吐き出させるということを何度も行い、胃の内容物を洗浄してルーメン内pHを上げようというものです。理論は簡単ですが、300kgくらいの肥育牛でも大変な作業となります。とにかくお湯を投与するのは良いのですが、吐き出させるのがすごく難しいです。よって重度の症例にしか適用しません。軽度〜中程度の症例では、当診療所では薬用炭300g投与します。これは、急激なルーメンアシドーシスによる異常発酵によるエンドトキシンなどの大量の毒素を吸着させることが目的です。よって早ければ早い方が有効です。併せて硫酸マグネシウムなどの下剤も投与します。これは腸などの下部消化管に溜まっている未消化物などを排泄させるためです。またルーメン内pHの中和を目的としたアルカリ化剤などの投与も有効と言われています。その他、健胃剤、生菌剤の投与も併せて行います。ここでは、いかに早くルーメン内の異常発酵を抑えて、ルーメン内pHを正常戻すかが重要となるのです。
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