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佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−23 「ルーメンアシドーシスの治療(1)」」

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2009年1月30日

 急性のルーメンアシドーシスの治療で第一に行うのは、脱水の補正による循環血液量の確保です。循環血液量が確保出来ないと、腎前性(腎臓より前)の腎不全となりショックに陥ります。この時間が長くなると、肝臓など色々な臓器がダメージを受けて、不可逆性(元に戻らない)ショックになってしまうのです。よって血管を確保して補液を行います。補液の種類としては、血液がアシドーシス(酸性)になっているので、重曹などのアルカリ化剤、およびリンゲル・生理食塩水などの等張液を使用します。補液量は、脱水の程度などによって調節します。ここで注意しなければいけないのは、ハルゼンなどの乳酸加リンゲルを使用しないことです。急性のアシドーシスでは、ルーメンからの血中への乳酸の移行により、血中の乳酸濃度が上昇しており、肝臓ではこの乳酸を重炭酸などへと頑張って代謝しています。そこへハルゼンを補充すると逆に症状を悪化させてしまうので、急性アシドーシスでのハルゼン使用は禁忌ですから注意して下さい。
 加えて、抗生剤や強肝剤、強心剤、ステロイド剤などを投与します。これらの薬剤についてては、各先生などにより多少の違いがあるのかもしれませんが、ここで一番重要なのは、循環血液量の確保と血液pHの調節だと思います。しかしこれらの治療は、緊急に対応した対処療法であり、原因療法ではありません。原因療法は次回・・・。
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