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佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−22 「ルーメンアシドーシス」」

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2009年1月23日

 肥育の治療で、急患として呼ばれる病気の一つが、急性のルーメンアシドーシスです。これは前回のコラムでお話した、濃厚飼料の急激な増飼や農家さんの給与失技または盗食などで起こります。増飼が原因の場合は、牛群の中で一番強く、他の牛を押しのけて食べるような牛ほど、たくさん飼料を食べて急性のルーメンアシドーシスに陥り易くなります。症状は食欲不振や腸炎などの軽度のものから、脱水による起立不能などの重度のものまで様々です。下痢は必発であり、熱は平熱〜軽い微熱、ルーメン内にガスが貯留する牛もいます。そして重度のルーメンアシドーシスでは、聴診により必ずルーメン内や腸管に拍水音が聴取され、また脱水症状がみられます。これはデンプンなどの炭水化物をたくさん食べたことで、ルーメン内での酸の産生と吸収のバランスが崩れ、過剰に産生された乳酸の影響でルーメン内のpHが下がり、ルーメン内が高張になります。するとルーメン内の環境を元に戻そうとして、全身の水分がルーメン内に集まり、拍水音の聴取および脱水が起こるのです。もし増飼を行っている最中で牛の様子がおかしくなってきたら、すぐに獣医さんを呼んでください。時間が経てば経つほど、ルーメン内の異常発酵は進み、症状は重度になってきて、最悪の場合死亡することもあります。これは盗食の場合も同じですが、緊急を要する疾病です。治療方法は次回のコラムで。
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