(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−20 「腹づくり総括 2」」

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2009年1月9日

 私は、これまで、ビタミンAの項目から肥育中心にコラムを書かせて頂きましたが、実は、この腹づくりの項目が一番書きたかった項目でした。肥育の腹づくりとは、何だろう?といつも考えており、極端に行なってしまうと、逆に牛にとっては大きなストレスではないかと考えていました。そして私は、ある農家さんと一緒に実験(勉強)をしました。その農家さんは、肥育素牛が高騰していた当時、わざと尾枕の付いた過肥の牛を安く導入されました(血統は良い牛達です)。3ヶ月間粗飼料のみで飼い直しを行うことで、筋間脂肪を無くして肥育しようと計画したのです。その後牛達は、肥育期間、病気もしないで無事に枝肉になりました。結果は、筋間脂肪は無くなっておらず、ロースも小さく、サシも入っていませんでした。頭数は、たった5頭くらいでしたが、とても良い勉強になりました。私が考える肥育前期の腹づくりは、筋間脂肪を無くす期間ではなく、それ以上付けない様に工夫しながら、肥育飼料に慣らす期間であると考えます。その前提として、過肥な牛を導入しないことです。そして導入した牛達を自分の力でどうにかしようと考えず、牛に任せて、その能力を出してあげるという事が重要ではないでしょうか。極端な腹づくり(飼い直し)を行うこと自体、その牛に負荷(ストレス)を与えていると思います。もし飼い直しをやりたいのであれば、農家さん自身もそれなりの努力を費やさなければなりません。
 この肥育の腹づくりの関しては、私が実際に多くの農家さんを診療しながら、勉強させて頂いていることをいろいろと書かせて頂きました。全国で様々な考え方があるため、御非難を受けるとことも承知の上です。私自身の個人的な意見として読んで頂ければ幸いです。
 次回からは、また肥育とストレスの項目に戻ります。
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