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佐々隆文のコラム
「肥育とストレス−12 「肥育前期の腹づくり 2」」

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2008年11月7日

 濃厚飼料を制限した極端な腹づくり(飼い直し)の何が問題かというと、肥育前期である生後9〜12ヶ月という時期は、腹腔内脂肪の発達時期であると同時に、骨格や筋肉、特にバラやロースの発達時期と重なるということです。言ってみれば「体づくり」の時期にもあたります。人間で例えるならば中学生くらいの成長期なので、体を大きくするためにはそれなりのエネルギーやタンパク質が必要なのです。そのエネルギー(TDN)やタンパク質(CP)を粗飼料だけで補おうとすると、粗飼料の給与量が大変な量になってしまいます。例えば、9ヶ月齢の300kgの去勢の場合、稲ワラのみで成長に必要なエネルギー量(TDN)を補おうとすると、一日13〜14kg給与しなければいけない計算になります。しかしこの量を給与したとしても、筋肉の成長に必要なタンパク質(CP)は全然足りません。また、例えばこれをチモシーに替えても約9kg、オーツヘイでも11kg必要です(チモシーやオーツヘイの質にも依りますが、おおまかな概算で考えてください)。みなさんも分かるように、導入したばかりの牛にこんな量を毎日食べさせるのは簡単なことではありません。もし必要量食べなければ、牛は肥育するどころか痩せてきてしまいます。もちろんこのような極端な腹づくりの方法で肥育が上手くいっている農家さんもいますが、多くの肥育農家さんは失敗しているようです。
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