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第401話:珍味への誘い |
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2015年2月12日
一体全体今までどのくらいやってきたのだろうか・・・・。
僕たち獣医さんは去勢という手術をしょっちゅう行います。去勢というのはまあ、簡単に言えばオスの金玉(お下品な表現)をとっちゃうことですね。で、この取ってしまった精巣(お上品な表現)は普段どうしているかといいますと、農家さんが自分の牧場に穴を掘って埋めてしまうか、カラスかタヌキが持っていくということで、牧場の隅に放置している場合がほとんどです。
昔から農家さんで去勢をしているとよくこんな会話が交わされます。
Aさん「オイ、ハス。せっかくだから持って帰って食ってよかど。」
Bさん「こいは珍味でうまからしかで。食ってみやんせ。もってってよかど。」
Cさん「昔テレビでプロレスラーの蝶野がおいしそうに食べとったど。食べてみやん。」
そのたびに小生は「いや~~~、うまそうなんですけどねえ、また今度よろしく。」といってその場を去っていました。そしてそのやり取りは何度も何度も数えられないくらい続き、去勢の後のお決まりのあいさつのようになっていくのでした。昔は本当に「おはようございます」や「ありがとうございます」レベルでした(笑)。
ただ、いつも蓮沼青年の心のなかに何ともいえないやりきれない気持ちが残っていたことは間違いありません。肉用牛の臨床獣医師として金玉を食べたことがないということがどうしても、どうしても許せなかったのです。目の前に大いなる可能性を秘めた食材があるというのに、小生は一体全体何をしているのだという感じです。
そして不思議なことに、こんなに珍味であるはずの精巣の話を聞くことが多いのに、実際に食べたという獣医さんや農家さんの話を聞くことが小生の周りでは全くなかったのです。
どんな味がするのか、歯ごたえはどのようなものか、おいしいのかまずいのか、などなど興味は尽きません。そこで次回からはいままで料理も何もほとんどやったことのなく、おまけに味音痴の小生がこれまでに現場で取り組んできた事例を紹介してみようと思います。

珍味となるポテンシャルは十分にあると思います。
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