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では血液検査などを行わず、外貌状の所見によりズルを推測するには、どうしたらよいでしょうか?農家さんはよく足腫れなどでズルを判断します。一般的には、後肢の腫れはよいが、前肢の腫れはズルの可能性があるといいます。これらは、主にビタミンA欠乏症の症状と同じであり、これらに付随するエンドトキシンの産生によるズルの可能性を示唆するものであり有効な所見と言えます。しかし私が一番大事な所見と考えるのは、牛の食欲と便の状態です。どのような牛に瑕疵が出るのかと見てみると、前肢が腫れていようと、餌を食べて、良い便をしている牛などは、瑕疵は出ないようです。逆に足腫れなどはなくても、食いが極端に落ちてしまい、腹が巻き上がった牛や、黄色の水様性下痢を排泄している牛などの方が、瑕疵が多いような気がします。これらはやはり、外貌状は症状を示さなくても、正常ではなく病的状態に傾いてしまっているということではないでしょうか。またカルシウム欠乏で失神・転倒した牛などにも瑕疵が多いです。これらは物理的な打撲による炎症かもしれません。 また経済的損失の大きい全身ズルなどの原因としても、食欲が一番大事だと考えます。要するに、食欲が低下してしまうと、必然的に肝臓にて産生されるアルブミンの数も減り、A/G比の低下を招いてしまいます。 牛の仕事は餌を食べることだと考えます。少々の事があっても牛は餌を食べ続けます。牛が餌を食べない、仕事ができなくなるということは、病的な状態だと言えます。牛の外貌上の所見ももちろん大事ですから、よく観察すべきです。しかし「食欲」というのが、牛にとって一番のシグナルではないでしょうか。 |