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佐々隆文のコラム
「ビタミンAの話−33 「ズル(筋肉水腫)の原因」」

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2008年6月6日

 ズル(筋肉水腫)とは瑕疵のひとつで、枝肉の格付けでは、等級印の右上に瑕疵を示す「イ」の文字が押されます(詳しくは格付けについてのコラムを参照してください)。このズルが枝肉にあると、枝肉単価がぐっと下がるため、ズルが多発する農場では、経済的損失が大きくなります。一般的にビタミンAの欠乏がズルの原因と言われますが、それは要因の一つであり、ビタミンA欠乏だけが原因ということではありません。ビタミンA欠乏症が多発する農場でもズルがでない農場はありますし、逆に病畜などで、血中のビタミンA濃度が低下していない場合でもズルになったりします。ズルとは即ち筋肉の炎症ですから、炎症起こす要因は、すべてズルの原因となるため、これが原因であると断言することは難しいです。
 現在のところ、肥育牛の主なズルの原因として考えられているのは、血中のビタミンA、ビタミンE、カルシウムや亜鉛濃度の低下、またそれらの欠乏により産生されるエンドトキシンなどで、これらが単一、または複合的に絡み合い発生するものと考えられています。
 要するに、肥育牛は肥育期間満了に向かうにつれて、体内の栄養素バランスを崩さないようにギリギリのところで肥育が行われますが、その均衡がやぶれバランスが崩れてしまうと、病的状態となり体内の炎症(ズルなど)が発現するのです。
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