(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
佐々隆文のコラム
「ビタミンAの話−16 「免疫力」」

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2008年2月1日

 意外に知られてないビタミンA の役割として、免疫反応があります。シェパードでは、重度の慢性肺炎の牛には治療目的で高濃度(単位)のビタミンAを投与します。ビタミンAが欠乏すると免疫担当であるマクロファージの貪食能やNK(ナチュラルキラー)細胞の活性が低下するなど、免疫反応にいろいろ悪影響を及ぼします。
 また、前のコラムでもお話させていただきましたが、ビタミンAは皮膚や粘膜の上皮細胞の分化を正常に機能させる働きがあります。体の皮膚や粘膜は外界と直接接触する部分であり、外部からの病原体の侵入を防ぐバリアーという役割を持っています。よってビタミンAが欠乏すると免疫力が落ちるだけでなく、このバリアーも弱くなり、生体の防御能が落ちてしまいます。
 そのため、慢性肺炎に限らず重度の疾病に罹患している個体については、肥育月齢に関係なくビタミンAを投与するようにしています。だって慢性肺炎の牛は、ビタミン欠乏にならなくても正常牛よりマイナス要因が多いのに、ビタミンA欠乏により免疫力が下がればさらに追い討ちをかけるようなものですから。
 また慢性肺炎の牛は食欲も安定しませんからサシもあまり期待できません、それならばサシより増体に期待してなるべく健康に飼える様に。
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