(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
佐々隆文のコラム
「ビタミンAの話−15 「便の状態」」

コラム一覧に戻る

2008年1月25日

 便の状態も大変参考になります。ビタミンA欠乏の初期症状としては、最初にお話した食欲低下に加え、「便の酸化が早くなる」ことも挙げられます。これは前回の項でお話したビタミンA欠乏によるルーメンでの酸の吸収能の低下が原因です。すなわちルーメン内で吸収されなかった酸が、そのまま下部消化管に送られて便として排泄されるため、便の酸化が早くなるのです。「便の酸化」とはどういう状態かと言うと、通常肥育牛の便は黄褐色ですが、これが酸化すると暗緑色に変化するのです(詳しくは桐野先生のコラムを参照して下さい)。
 また他にも、軟便が続くなどの症状もビタミンA欠乏症の一つと考えることが出来ます。これはビタミンAが上皮細胞の分化に関わっていることに起因します。ビタミンAが欠乏すると小腸や大腸の粘膜上皮細胞が正常に機能しなくなり、下痢になり易くなるのです。また、ルーメン内が酸性に傾くことで、肥育牛とは常に過剰な酸の脅威に曝せれているため(濃厚飼料を常に多給されています)、ちょっとしたストレスなどで、ルーメンアシドーシスに陥ります。ルーメンアシドーシスに起因する消化不良便なども多くなってきます。
 さらに、ビタミンA欠乏症に続発する肝炎などでも下痢を繰り返すので、やはり軟便はビタミンA欠乏の一つの指標のとなります。
|