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佐々隆文のコラム
「ビタミンAの話−14 「ビタミンAと亜鉛」」

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2008年1月18日

 ビタミンAを投与する際、よく「ドン八ヶ岳」を併用します。ではなぜドン八ヶ岳を添加するのでしょう。これはビタミンAと亜鉛との関係が重要なカギを握っているからです。牛の小腸より吸収されたビタミンAは一旦肝臓に蓄えられます。その後必要に応じて全身に運ばれますが、その際RBP(レチノール・バインディング・プロテイン)という蛋白質と結合し全身に運ばれます。言い換えれば、このRBPが正常に働かなくては、いかに肝臓にビタミンAを貯蔵していても、必要としている全身の組織にビタミンAを運搬できないことになります。このRBPの生成に亜鉛が必要不可欠となるのです。よって肥育牛にビタミンAを投与した際、ビタミンAが有効活用されるように亜鉛も投与してあげるのです。当診療所ではドン八ケ岳を使用しています。ドン八ヶ岳は、亜鉛だけでなくカルシウムや他の様々なミネラルが含まれていますからとても効果的です。
 また肥育中期(生後15〜23ヶ月)で食欲が低下した牛達には、ビタミンA投与は避けたいので、この場合ドン八ヶ岳単独で添加します。案外ビタミンAを投与しなくても、これで食欲が戻る牛も多いです。亜鉛が、貯蔵されているビタミンAを引っぱり出してくれるのかもしれません。
 現在はビタミンD3やビタミンA入りのドン八ヶ岳も出ていて、いろいろな用途に使い分けて使用しています。ビタミンD3とはカルシウムの吸収を促進させる脂溶性ホルモンで、カルシウム剤を添加した時に同時に注射することが多いです。しかしビタミンD3入りのドン八ヶ岳ではカルシウムと一緒に中に入っているので、これ一本で一石二鳥です。使用してみるとかなり良い手応えがあります。
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