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佐々隆文のコラム
「ビタミンAの話−13 「足腫れ」」

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2008年1月11日

 次に見ているのが足腫れです。これは中足や中手の部位が浮腫を起こしている状態で、いわゆる足のむくみを言います。農家さんに「足が腫れている」との凛告を受けた場合は、ほとんどがこのパターンで、ビタミンA欠乏症で肥育農家さんがよく見つけることが多い症状のひとつです。ビタミンA欠乏で足腫れが起きる理由としては、以下のように説明されています。
 ビタミンAの欠乏により、まずルーメン(第1胃)の粘膜の機能が低下します。するとルーメンにおける酸の吸収能が低下して、ルーメン内が酸性に傾き、それによりルーメン内の悪玉菌(大腸菌やクロストリジウム)が死滅していきます。これら悪玉菌は死ぬ際に菌体毒素(エンドトキシン)を放出するので、このエンドトキシンが血中へ回り、足腫れが起きると言われています。
 さらにもう一つの理由として、ビタミンA欠乏による食欲低下や続発する肝炎などによる肝機能低下が原因として挙げられます。食欲低下や肝機能低下があると、肝臓でのアルブミンの生成能が低下します。アルブミンは血液の浸透圧の大部分を担っていますので、これが少なくなると、浸透圧が低下し、血管外に水分が漏れやすくなってしまうのです。またビタミンAは細胞外マトリックスの生成にも関与しています。細胞外マトリックスとは血管や細胞以外の間質という部分の構成成分で、この細胞外マトリックス生成能が低下することが、水分の血管外漏出を助長すると言われています。
 足腫れは先ず、後肢に来ることが殆どで、症状が進むと前肢に来ることパターンが多いです。前肢の腫れは一般的に予後不良な場合が多いので注意が必要です。
 写真は前肢中手のエデマ(腫れ)です。
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