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佐々隆文のコラム
「ビタミンAの話−12 「皮膚の異常」」

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2007年12月28日

 肥育農家さんでは、牛の仕上がり具合を皮膚の状態で判断することがよくあります。被毛に艶がなく、フケがたくさん出ている牛ほど、牛が枯れてきていて、仕上がっていると判断するのです。実はこれ、ビタミンAの欠乏状態を観察しているということなんです。ビタミンAは皮膚などの上皮細胞を分化させて、正常に機能させる働きを持っているので、欠乏症に陥っている場合、上皮細胞の分化がうまくいかず、角化亢進(つまりフケ!)が見られるのです。また、皮脂腺の上皮にもビタミンA欠乏の影響が出るために、皮脂の分泌がうまくいかずに、毛艶が悪くなります(ワックスがうまく出ないみたいなもの)。
 さらに、皮膚の上皮細胞が正常でないため、正常な牛に比べて皮膚病にかかり易くなっています。例えば、疥癬(ショクヒヒゼンダニの感染により起こる)はビタミンA欠乏の牛によく見られます。肥育農家さんに「昔は、この疥癬症をサシが入る皮膚病と呼んでいたんだよ」と聞いたことがあります。これも牛がよく枯れた状態を表現していたのかもしれません。ちなみに現在は、疥癬症に感染しているとストレスで増体が落ちることが分かっていますので、積極的に治療します。
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