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佐々隆文のコラム
「ビタミンAの話−4 「肥育におけるビタミンAコントロール」」

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2007年10月26日

 前回、脂肪細胞の分化を促進または抑制する因子があるとお話させていただきました。これを単純に考えると、「じゃあ、ビタミンCなどの分化促進因子をいつもたくさん与えて、抑制因子であるビタミンAなんかは与えなきゃいいじゃないか」、という話になります。しかしこの考え方には危険な落とし穴が2つあります。
 まず、脂肪前駆細胞から脂肪細胞へと分化する時期はある程度限定されており、いつでもそうすれば良いという訳ではないです。その時期というのは一般的に生後15〜23ヶ月の間(9ヶ月齢導入の場合の肥育農家さんで言うと、導入後6ヶ月〜14ヶ月)と言われています。よってこの時期に脂肪細胞への分化を抑制するビタミンAの血中濃度を低くコントロールするのがサシを入れるために効果的であると考えられています。
 そうは言っても、ここで注意しなければならないのが2つめの落とし穴で、よく勘違いされている点です。確かにビタミンAの血中濃度が高すぎると脂肪細胞への分化が抑制されてしまいますが、低ければ良いという訳ではありません! ある一定濃度以下であれば問題ないのです。ビタミンA濃度を低くしすぎてしまうと、逆に「ビタミンA欠乏症」といわれる様々な症状が現れ、牛さんにとってかなりマイナスになってしまいます(具体的な数値は次回お話します)。
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