(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
佐々隆文のコラム
「ビタミンAの話−3「脂肪交雑とは」」

コラム一覧に戻る

2007年10月19日

 前回のコラムで、黒毛和種の脂肪交雑(サシ)の能力についてお話させて頂きましたが、この脂肪交雑について少し詳しく説明させて頂きます。
 いわゆる「脂肪」というのは脂肪細胞の塊です。そして脂肪細胞とは、もともとは動物が飢餓から逃れるためのエネルギー貯蔵庫であり、体のあらゆるところに存在します(皮下脂肪、筋間や筋内、腹膜下、腸間膜…など)。それが筋肉内、厳密に言えば筋繊維が集まってできた筋束の周りに脂肪細胞が存在することで、いわゆるサシになるのです。
 この脂肪細胞は初めから脂肪細胞としてそこに存在するわけではなく、もとは脂肪前駆細胞というものがあって、それが分化(成長)してサシを形成する脂肪細胞となります。つまりこの脂肪前駆細胞がうまく分化しなければ、サシは入らないのです。
 では脂肪前駆細胞が脂肪細胞にうまく分化するには何が必要なのでしょうか。これまでに脂肪細胞の分化に影響する因子がいろいろ解明されてきています。
 例えば、インスリン、酢酸、亜鉛、最近ではビタミンCなど、今回は個々の説明について省きますが、これらの因子は分化を促進すると言われています。逆に分化を抑制する因子として「ビタミンA」が分かっています(ここでようやくビタミンAが登場です)。
 肥育農家さんは、自分の育てる牛たちに芸術的なサシを入れるために、なるべく多くの脂肪前駆細胞が脂肪細胞へと分化するように、飼養管理をしているのです。
|