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椎葉絢香のコラム
牛の獣医師になりたい!想いの始まり⑤

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2014年10月30日

 私は幼少の頃から、いつも父のこの言葉を聞いていました。
だから、小さい私でも、お別れする時までは大事に可愛がってあげよう!と思うようになり、
『可愛くおとなしい牛になるんだよ。かっこよく元気な牛になるんだよ。次の場所でもいい子にするんだよ。』
と牛に話しかけるようになりました。

 牛を売買している農家さんならもうご存知だと思いますが、競り市が終わった後に予防注射や徐角を流れ作業で行い(これも個体情報や購買者によって様々です…)、牛さんは番号の書かれた部屋に移されます。この番号は、購買者(子牛を買う農家)別に決められており、私の実家近くの市場では生産者(子牛を育てた農家)がその場所まで連れていく仕組みになっています。

 牛を各番号の部屋に連れていくと、そこには他の牛さんがもうすでに入ってつながれています。その部屋にいるのは同じ人が買った牛さんですので、これから一緒にトラックで運ばれ一緒に生活していくお友達です。

『いい子ね。今までありがとう。新しいお家に行っても皆と仲良くしていい子にするとよ。元気でね。』

 私の家族は、牛を部屋に連れて行った時と、最後に競り市場を出る時の2回牛さんにお別れを言いに行きます。その時、父も母も涙目になりながら必死で耐え、笑顔で見送ります。

牛の獣医師になりたい!想いの始まり⑤

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