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佐々隆文のコラム
「第7回 「発情期の子宮」」

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2006年10月26日

 頚管の関門を突破した精子は子宮内に侵入します。子宮内の精子移送は子宮筋の収縮運動が重要となります。直腸検査をしてみるとよくわかるように、発情期の子宮は触知すると強く収縮します。
 これは、子宮がエストロジェンの作用により自律的収縮性が亢進しているこ とに加え、外部からの刺激に対して敏感に反応してさらに強く収縮しているのです。
 自然の交配では交尾刺激により下垂体後葉から分泌されるオキシトシンや精槳中に含まれるプロスタグランジンによってこの子宮収縮が助長されます。
 また子宮内では精子の運動性も亢進します。前回お話したように酸性により精子運動が抑制されますが、これは短時間でアルカリに戻すことによって回復します。
 つまり頚管の中で酸性の粘液にさらされていた精子は、アルカリ性である子宮内に入ると運動性が活発となり、精子自身の力でも子宮内を進むことになります。
 しかし一方で、アルカリ性である子宮内では精子の生存時間は短くなり、不良精子などは白血球に貪食されたり、子宮液によって排泄されます。ここが精子にとって第二関門となるわけです。
 左の写真は、牛の発情期の子宮内の映像で、内視鏡を用いて撮影したものです。大学時代に撮影したもので、けっこう貴重かもしれません。
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