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佐々隆文のコラム
「第5回 「種雄牛」」

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2006年10月12日

 話は逸れてしまいましたが、本来の牛の自然の交配では雄牛が雌牛に乗駕し射精が行われます。牛の射精時間をみなさんご存知でしょうか?教科書には、一瞬と書いてありますが、実際に見てみると本当に一瞬(数秒)です。
 ちなみに豚では、牛とは対称的に5〜15分もかかります。これは一回の射精時に射出される精液量の違いによる差であり、牛の平均射精量は約5 ml、豚では約250 mlと言われています。牛では、この5 mlの精液に含まれる全精子数は50億、すなわち1 ml中に10億の精子が存在することになります。
 次に牛の射精部位は膣です。(当たり前じゃないかと言われそうですが、豚や馬の射精は頚管および子宮内で行われるのです。)牛の膣内に射出された精液は、交尾刺激による雌性生殖道(膣・頚管・子宮)の筋収縮運動によって膣から子宮内に吸引され、卵管に到達します。牛の精子が射精から卵管に到達するまでの時間は平均6〜8時間で、速いものでは数十分で卵管に到達します。
 しかしこの短時間(数十分)で卵管に到達した精子は受精には関与できないと言われています。射精されたばかりの精子にはまだ受精する能力がなく、雌の生殖道を通る間に受精能を獲得します。
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