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第49話:ルーメンの虫の話 |
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2014年8月29日
今回からは牛さんの第1胃や第2胃に寄生する寄生虫の話を・・・とその前に自分の勉強も兼ねて、「ルーメンの虫」について少し復習をしてみようと思います。
牛さんのお腹の中を見たときに一番の存在感を持っているのはやはりルーメンです。それもそのはず、ルーメンは牛さんの4つの胃の容積の80%を占め、なおかつ消化管全体の50%を占める巨大な袋です。その中には沢山の微生物という住民が住んでおり、牛さんに必要な栄養素を生産してくれています。主に細菌、原生動物、真菌が生息していますが、今回は原生動物にスポットを当ててみましょう。ルーメンに生息する原生動物(プロトゾアと呼ばれます)は嫌気性(酸素が嫌い)で主に繊毛虫(体表に毛が生えた虫)からなり、90種類以上が存在しています。繊毛虫はルーメン内の細菌叢がしっかり定着し、ルーメン内pHが6以上になって初めて住み着くようになります。子牛では早い場合で生後10日目に出現します。成牛では濃厚飼料の多給によりルーメン内pHが低下するとせっかく定着した繊毛虫が消えてしまうことがあります。繊毛虫がいなくなった牛さんは外見上問題は見られませんが、発育が悪くなることもあります。
牛さんを上手に飼うということは、虫(細菌、真菌も)を上手に飼っているということなのです。

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