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蓮沼浩のコラム
「第232話 「牛RSウイルス病 その4」」

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2011年6月16日

 肥育農場に導入されてきた牛さん達。鹿児島県では必ず肺炎5種混合生ワクチンを接種した子牛が市場に出てきますので、肥育農家さんたちは肺炎のワクチンを打ってあるから大丈夫と安心しがちです。確かにワクチンを一回は必ず打ってあるので何もしていない状態と比べればはるかに良いのですが・・・・残念ながらコレだけでは肥育農場の牛RSウイルスの大発生を防ぐのは難しい面があります。

 何故か?

 あくまでも小生の経験ですが、ワクチンを打ってあるはずの肥育牛なのに病気が広がり、治療で大変だったことがあったからです。そこで導入牛のウイルスに対する抗体価を調べてみると、かなりのバラツキがあることがわかりました。ちょっと抗体価などという言葉が出てくるとわかりにくいかもしれませんが、簡単にいえばウイルスに対する迎撃ミサイルの量とでも考えればよいでしょうか。何軒かの農場で調べたところ牛RSウイルスに対する抗体価が「 <1 」というものもありました。これは牛RSウイルスに対する迎撃ミサイルがありませんということです。援護射撃がないまま細胞性免疫という白兵戦でがんばるしかありません。他にも「 1 」や「 2 」なんてやつがあります。一応牛RSウイルスの場合、少なくとも「4〜16」はほしいといわれていますが、ちょっと心もとない結果であります。また、抗体価は時間と共に低下していきます。最初に「 2 」でも1年もすると「 <1 」なんてこともありえるのです。ワクチンを打ってあるからといっても意外と抗体価があがっていない牛さんもいるという事を頭の片隅に入れておいてくださいね。

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