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第44話:寄生虫の話㉛ |
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2014年7月18日
肝蛭が寄生した牛さんの症状としてはやはり貧血です。急性肝蛭症の貧血は極めて顕著で、急激に発現します。一方、慢性肝蛭症では感染後2~3ヶ月頃から認められ、通常数ヶ月貧血が持続します。貧血の原因は、初期においては肝蛭による牛さんの組織の破壊・損傷による出血です。
肝臓に寄生することから肝蛭と呼ばれていますが、肝蛭の幼虫は牛さんの体の様々な部位を移動して肝臓に向かうため、その中には通常のルートとは違った部位に入り込み、そこでとどまってしまうものもいます。
例えば子宮内迷入。繁殖障害などで子宮洗浄をしたら肝蛭が出てくることがあります。日本では珍しいことではないそうです。他に気管支内迷入や、濃厚感染地帯では胎盤感染も見られます。
肝蛭症の診断には、糞便中の虫卵を検出することが重要な検査の1つとなります。1匹の肝蛭が1日に算出する虫卵数は10,000個と推定されています。なんだかものすごい数を産卵するように思いますが、牛さんの1日分のウンチの中に、顕微鏡でしか見ることのできない虫卵を探すというのは実はとても大変なことなのです。
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