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第43話:寄生虫の話㉚ |
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2014年7月11日
牛さんの口から侵入して肝臓にやってきた肝蛭の移行幼虫はそこで成長するために牛さんから栄養をもらわないといけません。その際に幼虫は牛さんの肝臓の組織を食べてしまうのです。組織を食べる幼虫の数が多ければ多いほど牛さんの肝臓は障害を受け、虫が通ったところには虫道が形成されます。これらにより、急性創傷性肝炎または多発性出血性肝炎が引き起こされます。肝臓からは出血が見られ、肝臓組織は壊死を起こします。幼虫の肝臓の移行期間は約5週間ほどです。
感染してから40~60日で体長10~15cmまで成長した幼虫は肝臓実質から総胆管へと移行します。感染後70日くらいで体長3cmに達し、そこで産卵を開始します。牛さんの胆管は肝蛭が寄生することによる刺激だけでなく、肝蛭が排出する代謝産物からも刺激を受け、胆管炎を引き起こします。胆管炎が長期化すれば慢性胆管炎となり、胆管壁が肥厚・拡張し、なかには石灰化が見られることもあります。胆管壁の石灰化は牛さんで特徴的にみられる病変です。

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