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松本大策のコラム
牛が吐く!

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2014年6月30日

頻度はそう高くないのですが「牛さんが吐き戻しをする」というご相談をお受けすることがあります。

こういうケースでは、だいたい2つの原因に分けられるようです。
一つ目は、「うしのうし」。漢字で書くと「牛の齲歯」、つまり虫歯や歯の生え替わりです。
このときは痛みのためか、口の中から食べ物をポロポロとこぼします。ですから、牛さんが吐くときは、まず口の中を確認します。

さて、口の中に問題がない、とか吐いたものが少し消化されている、などのケースでは、胃袋を疑います。成牛で多いのは「双口吸虫」という寄生虫が、牛さんの第2胃に大量寄生しているケースです。
この症例を確定診断するには、糞便検査を行います。検査の要領は「肝蛭」の検査と同じなので、獣医さんにお願いしましょう。

僕は最近「双口吸虫症」が増えているような気がします。
それというのも、以前よく使われていたデラファックなどの薬は、肝蛭の成虫しか殺せない(つまり幼虫には効果がなかったのです)代わりに、双口吸虫にも一定の効果がありました。しかし最近(最近と言っても、もう20年近くですね)よく使われているファシネックスは、肝蛭を全ステージ、つまり小虫から成虫まですべて駆虫できる代わりに、双口吸虫への効果が期待できないのです。

もし「双口吸虫」が確認されたら、現在入手できる薬としては、「日本薬局方」のビチンがもっとも手軽だと思います。
以前は、シルナックペーストという手軽に使える薬があったのですが、数年前に製造中止になってしまいました。ビチンは獣医さんに相談すれば処方していただけると思います。

それから、子牛のサルモネラ症の後遺症として(僕の感覚なので「たぶん」なのですが)、かなり悪臭の胃内容物を吐く、というケースも時折見かけます。こういう子牛には、エクテシン液かバクテロン散の投与で改善することが多いです。いずれにしても最寄りの獣医さんに相談してみましょう。

牛が吐く!_01

牛が吐く!_02

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