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蓮沼浩のコラム
「第209話 「PI牛ってそもそもなんじゃ? その4(BVD-MDのお話)」」

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2010年12月2日

 お母さんのおなかの中にいる胎児は妊娠120日齢ではまだ免疫が完全にできていません。超簡単にいえば、この状態の胎児は感染したBVD-MDウイルスに対して抗体をつくることができないのです。では、抗体がつくれない状態でウイルスに感染した場合、その胎児はどうなるのか?一応二つの結果が考えられます。流産を起こすか、そのまま胎児がウイルスと共存していくというパターンです。このウイルスと共存している胎児が問題なのです。このウイルスに感染している胎児は無事に分娩までこぎつける事ができればちゃんと生きて生まれてきます。本当は無事に生まれて良かったとなるはずなのですが、この生まれてきた子牛は・・・・・

「体内に大量のウイルスをもっている病原性ウイルスを撒き散らすウイルスのかたまりのような子牛」

なのです。そしてこの子牛を持続感染牛、つまり「PI牛」というのです。ちなみにこの子牛の母牛はウイルスに対する抗体を作れますので、感染してもしばらくするとウイルスは排除され、問題ありません。しかし、見方をかえると、何でもなさそうな妊娠牛を買ってきたら、生まれた子牛がPI牛であったなどという可能性もあるのです。このような点でもBVD-MDが非常に厄介な病気であることがわかります。

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