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和牛の育種改良(素人ブリーダーの私見)-第10回-

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2014年5月27日

10、和牛の未来、牛の特性を発揮して

 私はホルスタインで酪農をしながら、興味本位で数頭の和牛を飼っていました。私が、はっきりとした意志を持って和牛を飼育しようと思ったのは、第2次石油ショックの時です。私は自家配合をしていたので、原材料の輸入穀類等が入ってこなくなり、明日の餌をどうしようということもありました。

 それ以前からも、世界各地の飢餓の状況の報道などを見て、家畜の餌に輸入穀類の大量消費をせざるを得ない飼育方法に、時として罪悪感さえ感じていました。
 雨が多く草が繁茂する日本で、和牛なら山野を利用し輸入飼料に頼らない牛飼いが出来るのでは、と考えたからです。
 しかし、実際の和牛飼育は規模が大きいほど自給が難しく、特に肥育はほぼ全面的に輸入飼料に依存しています。
 松本大策先生の5月12日のコラム「国産牛肉の新しい可能性」や先生が立ち上げた「日本牛肉協会」の主旨も、同じような視点からのものと思います。

 私は、和牛を肥育すると、病気などがない限り1頭残らずよく太ることに驚き、なぜ太るのだろうかと疑問を持っていました。
 それは、生命誕生から動物が生まれ牛になるまでの長い進化の過程は、命をつなぎ生き残るためには餌のない時の飢餓をどう乗り越えるか、そのエネルギーをどう体にため込んでおけるかの生存競争であり、その中で生き残るために身に付けた能力だと思います。
 ですから、牛は(多くの動物は)、もともと太る能力を持ち合わせた生き物で、なかでも和牛は、とりわけその能力が高いのです。
 また、反芻動物である牛は、多くの動物が利用できない植物繊維をエネルギーに変え、肉や乳を生産できることがその特性です。

 私が種雄牛造成に取り組み、母体となる雌牛を探すうちに、BMS12を出す母牛の中には草だけで太り過ぎて繁殖障害になる牛、他の牛が栄養失調になるような劣悪な環境にも(少ない餌でも)適応できる消化吸収能力を持った牛などに出会いました。
 私は、これらの牛を選抜し系統的な交配をすることにより、放牧適性に優れ、日本の山野に適合した和牛が造成できないかと考えています。その産肉能力が一定のレベルに達すれば、雌雄ともに放牧し自然交配で手間をかけずに飼育することで、遺伝資源の大きさ(集団の大きさ)も拡大できると思います。

 どんな飼育方法にも、多様な改良方向にも対応できる和牛、それは古代に伝来した在来和牛の遺伝資源と共に、明治以来の洋種による雑種造成により取り込んだ遺伝資源を含めて、和牛は雑種としての遺伝的多様性を内蔵しているからではないでしょうか。

(つづく)

A5ファーム 日下部俊雄
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