2014年5月13日 8、和牛牛産地の興亡 種雄牛の力④ 鳥取では、「気高」が質も良く、体型も良い牛として大繁栄し、全国に広がりました。鹿児島、宮崎をはじめ新しい牛の産地の多くで、気高系がその始まりとなっています。 島根でも、兵庫を交配した雌牛に岡山の第14茂を交配して「第7糸桜」を造成しました。私の若いころ、第7糸桜の子牛の価格が岐阜の子牛の2~3倍もしていて、驚いたものです。第7糸桜も、血液の4分の1が兵庫の血統です。その後、島根でも第7糸桜の近親交配が繰り返し行われました。 気高も第7糸桜も、血液の4分の1が兵庫の血統です。自県にない資質を、血液の導入で牛を変えたのです。しかし、名牛が生まれると他県を見る目が変わってきます。他県や他産地から学ぶ考えが薄れ、ひいてはそのことが産地の力に影響を及ぼしてきます。 これらの産地では、一時的には近親繁殖の多少の効果があっても、次第に近親交配の弊害が出るなど産地の力が落ちてきました。 鹿児島県では、兵庫から忠福(安美土井×茂金波)を導入し、その息牛の神高福とともに大きな役割を果たしました。最近の勝忠平や百合茂などは、かつての気高の造成方法を思い起こさせるものです。 岐阜県では、種雄牛は安福系の県有種雄牛が主体ですが、優良雌牛の保留と共に、県外から第7糸桜など糸系、平茂勝系統、安平や福之国、第1花国などを導入することで飛騨牛(安福)の力を維持してきました。 各産地において、県などの関わりも重要ですが、但馬の前田周助翁や田尻松蔵翁を引き合いに出すまでもなく、寝ても覚めても牛のことばかり考えている生産者の知恵をどう活かすかが、産地の盛衰の一番重要な分かれ目ではないでしょうか。 (つづく) A5ファーム 日下部俊雄 |