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松本大策のコラム
国産牛肉の新しい可能性

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2014年5月12日

 国際化という名の地球規模の競争社会が到来しようとしています。我が国も、好むと好まざるにかかわらず、この競争を戦っていかなければならないようです。

 しかし、こと牛肉生産においては、粗飼料も穀物も輸入が大半(この時点で外国には利益が出ているわけです)ですし、人件費も土地や資材も海外より高いので、「安いものを作る」という方法では国際競争を勝ち抜けないでしょう。
 この点からも、我が国の牛肉生産はあくまでも「良いものを高く売る」という差別化戦略で戦うしかないように思います。

 さて、ここで「良いもの」について少し考えて見たいのですが、現在は「良い肉質」というと、やはり脂肪交雑重視ということになります。もちろん、「霜降り肉」は他の国の追随を許さぬ我が国の宝です。いわば牛肉のダイヤモンドです。
 しかし、みんなでダイヤモンドを作ってしまってそこいらじゅうにダイヤモンドが転がっているような状況になっては、かえってその価値は低下してしまうのではないでしょうか。

 経済学者のマイケルポーターは「全ての企業は、持てる資産と時間をつぎ込んで他者と同じものを作っている」と差別化の重要性を説いています。霜降りの価値を維持するためにも、その他の価値観を生み出し、それを浸透させて行くことは重要ではないでしょうか。
 赤身の美味しさ、香りの良さ、穀物消費量の軽減、環境負荷の軽減、我が国の土壌を護っている、など様々な価値を提供できると考えています。これを多様化する消費者へきちんと伝えること、世論を動かすこと、さらにはその価値観を「日本品質」として世界に輸出することができれば、胸を張って幸せな牛飼いができるのではないかと、まだまだ漠然とした中で、一生懸命考えている次第です。

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