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松本大策のコラム
分娩前後の飼養管理の問題 その9

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2014年4月21日

 これは分娩前後に限ったことではないのですが、良質の粗飼料を使うということは、牛さん(繁殖牛に限らず肥育牛もそうです)を飼う上でとても大切なことです。
 特に分娩前後には良質の粗飼料を使ってあげなくてはいけません。この時期は、肥育牛の導入期と同じくらい粗飼料の品質が大切な時期です。
 しかし、粗飼料の品質の影響が出るのはしばらく後ですから、ついつい値段などに目が行って、粗悪な粗飼料を使うことも多いのです。例えば肥育牛では、出荷成績で嘆くことになりますし、繁殖のお母さん牛では、分娩後の子牛の体調とか発情回帰や受胎率の悪化という形で現れるのです。

 目先の価格に目を奪われることなく、その結果もたらされる経営収支とのバランスを考えましょう。例えば、分娩前2ヶ月から分娩後1ヶ月、つまり3ヶ月間、90日で1日6kgの粗飼料をベースに使ったとしましょう。10円高いものを使っても90×6kgで540kgですから差額は5,400円です。もし粗飼料の品質が悪く、発情回帰や受胎までの期間が一発情分伸びると、2万円以上の損失になります。

 良質の粗飼料と粗悪な粗飼料では、タンパク質が3倍近く違うこともありますし、カロリー(TDN)だって大きく違います。それだけでなく、粗悪な粗飼料では硝酸態窒素の量も危険レベルだったりするのです。

 為替の変動や、世界の気象によって粗飼料の価格は変動します。コストをどう捉えるかですが、「良いもの」が高い場合、「粗悪なもの」も値段は高くなっています。価格は変動するものですが、相場の高い時に、粗悪なものを使って「大切な固定資産」である牛さんを壊してしまっては、経営に与える悪影響はさらに大きくなると思います。

 カロリーの半分から6割程度は粗飼料から与えてあげると、発情も受胎も良いものです。飼料計算をすれば、濃厚飼料からでも粗飼料からでもタンパクやカロリーを高くすることができますが、牛さんは生き物ですから、「計算値」だけでは帳尻が合わないのです。

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