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松本大策のコラム
分娩前後の飼養管理の問題 その8

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2014年4月14日

 これまで、分娩前後の飼養管理ミスとして、カロリーとかタンパク質のお話をしてきました。でも、僕が繁殖牧場で真っ先にチェックするのは、分娩前のお母さん牛の飼槽です。
 何を見ているかというと、飼槽が舐めたように空っぽになっていないか?という点です。つまり乾物給与量「DM(餌のかさ)」が不足していないかを見ているのです。
みんな、カロリー(TDN)とかタンパク質の量は気になさっているのに、意外に餌のかさを気にしていない、あるいは計算値の通りの給与で、その牛さんの実情にあっていない、というケースを、見かけるからです。

 みなさんだって、ご飯を食べる時には、一番の目安は「腹一杯か腹八分目」でしょ?どちらを取るかは人それぞれでしょうけど(笑)。
 それぞれの栄養は、何日かで調整していけるものです。でも、餌のかさが足りないと「えーっっ、本当はもっと食べたいのに!」とストレスがかかります。僕ははらぺこストレスと呼んでいるのですが、本能が満たされないストレスは意外に大きなもののようです。
 ストレスがかかると、副腎皮質ホルモンという「ストレスに抵抗するホルモン」が分泌されるのですが、このホルモンは量が多すぎると流産や早産の原因にもなります。
 さらに免疫を低下させる働きも強力です。ですから、分娩前2ヶ月ほどの乾物量が不足すると、生まれてくる子牛が小さかったり、普通の大きさで生まれても病気がちだったりしやすいのです。
 だって、お腹の中にせよミルクに混ざって飲んだにせよ、子牛は毎日「免疫抑制剤」を投与されているわけですからね。

 少なくとも、飼槽には乾草が数本程度残っていた方が良いと思いますよ。よくお母さん牛の舌遊びが見られる農場がありますよね。あれは牛さんの遊びなのですが、餌に満足していないと「遊び」も増えるものです。

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