(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
分娩前後の飼養管理の問題 その6

コラム一覧に戻る

2014年3月31日

 先週は、分娩前後の飼養管理の失敗で起こる子牛の下痢の一つ「ケトンミルク」のお話をしました。せっかくですから、続けて分娩前後の飼養管理ミスで起こる子牛の下痢のお話をしたいと思います。「ケトンミルク」はカロリーの不足で起こるのでしたが、お次はタンパク質の多すぎや利用効率の低下の際に起こる「高尿素窒素ミルク(別名ションベンミルク)」のお話をしましょう。

 哺乳動物は、タンパク質とカロリーのバランスが取れていなければいけないのですが、 牛さんの場合は、さらにタンパク質のうち、第一胃で分解されてアンモニアになる「分解性タンパク質」とデンプンや糖のバランスが取れていないと、第一胃で分解性タンパクから発生したアンモニアが「菌体タンパク質」という動物性タンパク質に近い新しいタンパク質に作り変えることができません。そうなると、第一胃で発生したアンモニアはそのまま吸収されて全身に流れ、そのうちの一部がお母さん牛のミルクにも混入してしまうのです。もともとアンモニアは猛毒ですし、お母さん牛の肝臓で一部分解されてできた「尿素」だって毒物です。そんなミルクを飲ませてたら赤ちゃん子牛も下痢しますよね。
 分解性タンパクから発生したアンモニアがミルクに混ざるのは、他にも良質の粗飼料をお母さん牛に与えていない場合や、分解性タンパク質とデンプン・糖の発酵速度のバランスが悪い場合、それからお母さん牛のビタミンAが不足している場合などにも起こるので、その辺りは注意しましょうね。

|